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ハイライト
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『○○さんって、バカ嫌いでしょ?』
仕事を終えて、タクシーを探す国道の道でT氏はそう唐突に私に問いかけてきた。
『なんですか?、バカ嫌いっていうのは一体?』
『いやいや。最近仕事でさ、○○さんと一緒に行動する時間長いじゃない。俺、なんか、そんな風に感じたんだよね、ふと。』
『でも、バカっていうのは、定義は何でしょう?』
『あぁ、そうねぇ、人の気持ちが分からないっていうか、そういう人かなぁ・・・』
思いのほか、私が話に乗っていかなかったのでT氏は面倒くさそうに、そう言って、タクシーに手をあげた。タクシーの運転手はダメダメという風に手を振って、苦笑して通りすぎてゆく。
『人の気持ちなんて、分からないよ、僕だって』
拗ねたように返事をした。

でも、T氏の言うのは何となく分かるような気がする。
僕には極端に冷たいところがあって、そういう部分は人に伝わるのだろう。
でも、バカが嫌いってことなのか、どうか僕には分からない。

『あのね、なんだろうな・・・。○○さんって人のこと見えすぎるでしょう?』
『ははは』
『俺、絶対分かるの、それ。なんか○○さんと俺似ているなぁとか思うから。自分みたいに分かるんだよね』
『似てるかなぁ・・・・』
タクシーがやっと捕まって僕らは安堵して、後部座席に滑り込む。
T氏が携帯で会社へ連絡をつけている間に僕は煙草に火をつけて、少し考え込んでいた。

会社を退職することになった上司と、年末の挨拶周りをした。
上司はこう言う。
『俺が辞めるって言ったら、お客さん、びっくりするぞぉ。今日は次のアポ遅れるつもりで付き合えよな。あのお客さんは俺に頭あがらないんだ』
『はい。付き合いますよ』
辞職する挨拶をしに行くと、お客さんはあっさりとしたものだった。
『あ、そうですか。辞めるの。ふーん』
3分と持たなかった。

帰り道、上司の気持ちが伝わってきて、僕は少し泣きそうになった。
青空を見上げて、二人で無言で歩いた。東京の冬の風は冷たくて、でも、気持ちがいい。
僕はこの人に頑固で生意気で意固地な可愛くない部下として、自分の我を貫いて接してきたけど、この人のことを殆ど分かっていなかった。

人の人生はそれぞれ重い。過ぎ去った地層のように折り重なった時間もまた重い。
長く見続けてきた幻想も重い。なにもかもが嫌気がするほど、重たく肩にのしかかってきた。

『Tさん、俺、バカ嫌いだね。うん。あなた鋭いよ』
すぐに次の電話を掛け始めているT氏に僕は顔を見ずに答えていた。
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by waterkey | 2006-12-07 22:32 | SNAP



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