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異例対談(5)waterkey / X氏 
「だからね、僕はやっぱり、あなたの距離感とかさ、表現の深いところを流れている思いみたいなものに感動しているし、共感しているんですよ。」

-それは嬉しい言葉ですね。

「もっというと、いい意味での家内手工業的な非効率な、あなたの写真表現の提出の仕方みたいなね、そういうものが伝わってきて、じわじわと胸に迫ってくるものがある」

-ありがとうございます。

個人的な営みを続ける意味

「ある意味でね、表現は誰かを何処かへ運ぶような強い力を持っていると思うんですよ。それは“ある場合において”、特定の場合にのみに開かれる気まぐれなドアかもしれないけど。僕はこの前、そういう意味のことを何処かで書いたけど、そのためには、それなりのプロセスを潜り抜けて来ないと人に何かを伝えるほどのパワーは持ち得ないと思います」

-それは、もう本当にその通りですね。

「そうするとね、覚悟みたいなものの話になってくる。必然的に」

ーうーん。

「個人としてね、きっぱりとしたイエスやノーを長いこと僕らは、唱えていないですよ。これはもう歴史的といってもいいくらい、長いこと」

-個人としての意見を出していない。

「それはもう、僕らを取り巻く環境がね、単純に良いとか悪いとかの判断を下せる、そういう簡単な二段階的なシステムじゃなくなっているし、個人として、明確な回答はもう何処にも出せないんじゃないかと僕は思っている。もし、出来るとしても、それは途方に暮れるほど時間がかかるんですね。少なくとも僕にとっては。」

-ええ。世の中が余りにも複雑になってきていますから。

「どこへ向かうか?。僕は細分化に向かっていることを認めます。そのくらい、個人の差異は、あるいは開きはもう分かれてきているから。嗜好や趣味なんかも」

-でも、それだけじゃ詰まらないですしね。何処にもいけない。

「僕らに出来るのはね、もう曖昧な、その場しのぎ的な、状況に身を委ねつつ唱える小さなノーであり、イエスでしかないかも知れない。で、それはもう本当に個人的な作業になってくるし、でも、それだからこそ深い意味を持つように思うんですね。」

-写真を撮るというのは、イエスやノーを代弁しているのでしょうか?

「写真を撮るということは、もう完全にそういうことなんだろうと僕は思いますね」

-選びようのない物事にイエスやノーを小さな声で唱えるきっかけとしてですね。

「そういうことになると思います。だからねぇ、これ僕は言って良いのか悪いのか、良く分からないけど、写真を撮ることくらい個人的な行為はないと思うんですよ」

-それは本当に個人的な行為ですからね。

「イエスもノーも言えない風景の前に立って、そういう未整理なものを撮り貯めていくしかないんだろうなと僕は思いますね。」

ー偶然に期待しながら?(笑)

「偶然に期待しながらですよね。だって、もう僕らは本当にそれが向こうから飛び込んでくるのを期待しながらも、やってくるか、どうか分からない奇跡みたいなものを心待ちにしながら、それぞれ路地を歩いていくしかないわけだから。つまり、ニュース性の乏しい日常みたいな場所をさ。」

-そうですよね、個人としての距離感を養いながら。

「養いながら。で、僕はそういう個人史みたいなものの系譜がいくつも生まれていく時期が来ていると思う。本当に。」

-個人史ですか。

「個人の物語というか、個人の表現ですよね。だから、何を提出するかというより、もうそれは距離感の問題なんですね。あるいはスタンスというか。だから、あなたの写真に異国的なものがあると僕は言う。それはね、本当にあるんですよ。でも、何処にあるのか、というと、心の中にあるんですね。世界は別に外側も内側もないわけだから。その異国としてしか風景に向かい合えない、そういう不器用さに僕は惹かれているし、そこに深く感じるものがあります」

-これから、どういう写真を撮っていきたいですか?

「大きなことは出来ないですね。そういう意味で。ただ小細工をせずにね、やっぱりそういう未整理な風景を自分なりに蓄積していく時期だとは思いますけど」

-僕は、いま撮っているような写真が、一枚ではなく、それこそ何十枚、何百枚という単位で、繋がっていくようなイメージを持っていますね。

「なるほどね。」

-そういう長い時間を掛けて、自分も何が見えてくるのか試してみたいんです。

「まっ、時間は掛かりそうですね(笑)お互い」
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by waterkey | 2006-08-24 21:32 | 対談集



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