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異例対談PART(1)waterkey / X氏
異国感とでもいうべき感覚

W「僕はあなたの写真を見て、いつも感じるのは異国感なんです。なんていうか、上手く言うことは出来ないけれど。
そして、僕ははじめから、あなたの写真に限って言えば、その異国感のようなものに惹かれているんですよ。でも、それは何だろう。日本を外国のように映すというコンセプトによるものではないだろうし、絵の切り方※や色の扱い方によるものでもないと思うんだけれどね。ましてや、あなたの写真は殆ど白黒で撮られているわけだから」※この場合、絵のきり方とは構図をあらわしている。

-面白い指摘だと思います。それは日本的な情緒みたいなものに乏しいということなんでしょうか?つまり、僕という人間の中で。

「そういうのも少なからずあるんじゃないかな。でも、僕が思う異国感というのを仮に定義すると(笑)、例えば、フランツ・カフカという作家がいるんです。」

ー名前は知っています。でも読んだことはないですね。

「今度読んでみるといいです。そのカフカという作家は、たとえば目の前で行われている情景を“他人事”のように克明に記述していくんです。まるで俯瞰から見ているような感じで。殆ど情緒というものが含まれていない、現実的な筆致で。
でも、たとえば、僕らの場合、誰かに今日あったことを話したりする時なんかに、どうしても自分の感情を含めて話しますよね。」

-話しますね、うん。

「例えば、誰かと喧嘩をしたとする。他愛ない口喧嘩みたいな諍いをしたとする。でも、当事者の“僕”は、その相手との関係性みたいなものを鮮明に相手に伝えようとするがあまり、いろんな脚色をしてしまうと思うんですよ。つまり、自分と切り離したところで、冷静な視点で相手のことを語るというよりは、よりオーバーに。なぜなら、僕らは誰かと喧嘩をしたんだよ、ということを客観的に話したりしないですよね。感情があるから。でも、そうすると人が見ていることを前提にした変な日記みたいになる(笑)」

-それは、やっぱり同情をして欲しいし、味方になってもらいたいから(笑)

「そうですよね。でも、その場にいて喧嘩を目撃していた他の人にしてみれば、なんか良く分からないけど、お互い様だなとかね。(笑)全然、僕の感情と別の視点で見るわけだから。でも、その別の視点にしたって、まだ高さとしては低いんです。
本当に喧嘩を冷静に見て、判断できるのは、うんと高い位置。例えば神様くらいの俯瞰くらいからじゃないと中々、公平には見れないと思うんです。で、そのくらい高みから見下ろしたら、地上でなんかやっているけど、つまらんことだ(笑)みたいなね。もっと全然、冷静ですよね。公平とかではなく、どこか遠い別の場所で行われていることくらいにしか見えない」

ーつまり、waterkeyさんの言う異国感というのはそういうことなんですね。

「僕の異国感というのは、ある意味では、そういうことに近いのかもしれない。なんていうのかな、つまり、平熱感というかさ、関わりのなさ、みたいなね。とりあえず定義すると。」

ーこれまで、誰かにそういう指摘をされたことはなかったですけど、そう言われて自分の写真を見ると確かにそういう傾向は少なからずありますね。うん。

「で、僕は、そこに凄くリアルを感じるんですよね。写真表現としてリアルだな、と。あるいは、僕らの世代の世界観なんかとしてリアルだな、と。だから僕は-これは批判的な意味で言うわけでは決してないんだけれど、-花のマクロ(接写)写真なんかを見て、そこにはリアルをまったく感じないんですよ。不思議ですよね。被写体にそれだけ近づいて、写真を撮っているのに全然リアルじゃないというのは。」

ーミクロの視点で、被写界深度を深めて、非常にシャープに被写体を捉えているのにリアルじゃないと。

「逆ですよ。何か一つをクリアに写すために、全体の被写界深度は浅くなっているはずです。とにかく大抵のマクロ写真を見て、僕はそう感じる。あなたはどうですか?」

ー深度は逆でしたね。僕も、そう思います。でも、それはどうしてなんだろう?。でも、僕はマクロ写真を撮らないし、そういう表現には向かわないですね。僕が撮りたいのは街だったり、人だったり、そういうものですよね、後は光と影のように、ラインがくっきりしたもの。それからその間にある何か分からない漠然とした空気みたいなもの。

「僕は、マクロ写真がなんでリアルじゃないかというとね(笑)、僕らは日ごろ、あんな風に花を見ないしさ、実際あんな風には肉眼で見えないわけでね。そういうこともあるとは思うんだけど。なんか、どうしてもメルヘン的だったり、幻想的に見えてしまうんだよね、あれを見ると。で、綺麗だなくらいには思うけれど、そういうのが心に訴えかけてくるかというと余り、訴えかけてこないんですよ。」

-分かる気がします。僕は人の写真を見て面白いなと思うのは、やっぱりその人のパーソナリティーみたいなのが滲み出ているような写真なんですよね。そういう意味で考えたとき、確かに花の接写では、なかなか個人の視点みたいなのが、出ていないものが多いような気がします。好みもあるんでしょうけど。

「スナップを撮る人というのは、写真人口の中でも結構少ない人種じゃないですか。テーマ別の人口みたいなもので言うと、圧倒的に少ないですよ。街を撮るみたいなのはね。でも、スナップというのは、一番パーソナルな部分の表現に向いていると僕は思うんですよ。まぁ、好みもあるとは思うけど。」

-確かにスナップというのは追いやられてますよね。脇の方に。(笑)

「異国感というのはね、やっぱり何かそういう、パーソナルなものとの影響関係から来ていると思うんですよ。なんか、ストレンジャーというかさ。」

-あぁ。ストレンジャーか。なるほど。

「凄く切り離されている。でも、それが自分とそれ以外のもの-つまりは外界-という関係で、切り離されているというよりは自分と、自分の心みたいなものの切り離され方という感じを僕は受けるわけです」

-つまり、喧嘩をした相手と自分を切り離して見るというよりは・・・、

「喧嘩をした自分をも切り離している。高い位置なんです、写真の目線が。」

-そういう感じを受けると。でも、それは面白い指摘だなぁ。考えたことなかったです。勉強になりました(笑)

「ちょっと話を変えると、僕は、表現についてはこう思っているんですけど、やっぱり自分が思っていないことや、自分と大きく違うものって長続きしないというか、最終的には『こう撮ろう』みたいな意識じゃなくて、『こう撮れました』みたいに自然になっていくと思うんだけど、そういう意味で、意識が消えてる写真の方に惹かれる傾向があるんですよ。それは人の写真を見る側としても」

ー最近そういう瞬間が僕も増えてます。写真を始めた頃はどうしても写真家の写真を模範したり、どうやったら、ああいう風に撮れるんだろうという意識で、真似る部分が多かったんです。でも、長いことやってきて、そういう気持ちがどんどんなくなってきてますよね。

「距離的には離れたり、近づいたりして位置を変えながら、被写体に向かっているんだけど、被写体に対する姿勢みたいなのが、あなたの場合、無理がない感じがするんですよ、冷静というか。
例えばライオンみたいな危険なものには、ちゃんと逃げれるだけの距離をとっているし、害のない猫みたいなのには、逆に向こうが逃げない程度に距離を保っているような感じというのだろうか?。その距離が自然なんですよ、見ていて安心が出来る。それが、ライオンに近付き過ぎちゃう写真を見ると、こっちが不安になる。手に汗握るというか。変にどきどきして疲れる。そういうのは一発芸としてはいいけど(笑)」

ーなるほど。それも、僕の性格にそういう部分はやはりありますよね(笑)

「僕はそういう撮る側の生理みたいなのが、-距離感と言い換えてもいいけれど-その生理が滲み出てしまうところが写真表現だと思うようになってきたんです。偉そうに言うようだけど。その確認行為に過ぎないんじゃないかって思う。だから写真の道具は僕はわからないんだけど、超広角レンズみたいなのって、そういう意味ではさ、まだ意識が消えてないんだよね。そこに、こだわりを持っているという意識がちゃんと写真には出ちゃうから。そういうところが個性的だとやっぱり見る側は辛いもの」

ー道具については僕はやっぱり信頼感が何より重要ですね。なるべく壊れない頑丈さとか雨に濡れても平気な奴とか。レンズについては、多少好みはあるけど。

「でも、無個性であって欲しいというのはないですか?例えば某社のレンズは、色の乗り具合が独特でみたいな話をされると、僕なんか途端に興味がなくなっちゃう。」

ーそういうのはありますね。あんまりキツい色の出方をするものは避けてます。

「なるべくであれば、レンズは透明なフィルターであって欲しいな。自己主張の激しい奴はいらないというか。全然そっけない感じの無個性なレンズが好きです」

ーそういうレンズって結構高いですよね。プレミア的な価値のあるもので独特なレンズの市場というのは厳然としてありますけど、ちゃんとしたレンズは無個性かもしれないですね。

「風景がそこにあったら、そのまま映る奴がいいんですよ。変に雰囲気を出してきたり、ないものをある風に映し出したり、あるものを削ったりとか(笑)そういうのは、やっぱり長い目で見ると辛いです。」

ー使わないし、使えなくなってきますよね。

「僕は写真を始めたとき、結構レンズを買い集めたんですよ(笑)。初心者なのに、そんなに要らないのにね。もちろん中古の安い奴だけどさ。
で、今はどんどんレンズを減らしている。外れていくのは大抵、個性が強い奴とか、そういうのはもう全然使わなくなってる。愛着が沸くのは、不思議な話だけれど普通の奴だけなんですよ」

ーレンズは僕も、そんなに持ってないですよ。

「で、たぶん、それは僕が道具にはそんなに興味がないと言うことなんだと思うんだよね。」

ー道具だけで写真を撮るわけじゃないですからね。

「それで、徹頭徹尾、僕の意見を言わせて貰うと、あなたの写真はとても孤独な感じがします」
- はい。




2.
「どうして、孤独な感じを受けるのかなぁ、と考えていたんだけど。最初は良く分からなかったんですよ。ただ、非常にそうした印象が僕にはあった」

- 一人で写真を撮りに行っているから、でしょうか?(笑)

「街に一人で写真を撮りに行く人は多いです。それは関係ない気がします(笑)」

- そうか。そうすると、なんだろう?

「それで、僕はずっと考えていました。で、一つには最初に話した関わりのなさ、みたいなモノのせいかなぁとも思ったんですけど。」

- 被写体に対する距離みたいなところですね。

「被写体との距離感について言えば、あなたの写真の場合、殆ど感じさせないんですよ。見ていて、もう少し近くに寄ればいいのになぁ、とか、ちょっと近づきすぎなんじゃないの、とかさ。余計なお世話なんだけど(笑)。そういう変な“じれったさ”は、もう全然ない。」

- トリミングしているかも知れないですよ(笑)後でこっそりと。

「トリミングしていても同じですよ。それを写真として切り取る意味では。」

- なるほど。

「サッカーは結構見るほうですか?」

- たまに。でも、球技全般あまり好んでは見ていませんけど。

「日本代表の中田選手がいるじゃないですか。彼なんかをグラウンドで見ると、試合を通して、とても孤独な感じを受けます。」

- 分かります。他の選手と何か違いますよね。

「あれ、たぶん、目線だと思うんですよ。僕は彼の試合を見に行った事があるんですよ。スタジアムの高い位置から見ていると、彼もそのくらいの高さに目線を持っているということが非常に分かります。これは驚異ですよ。グラウンドにいる選手というのは平面でプレーしているわけだし、そういう立体的な物の見方が出来るわけは、少なくとも物理的には出来ないわけだから」

- あぁ。なるほど。

「でも、他の選手はやっぱりそれに比べてしまうと、目線がグラウンドからの二次元的な感じなんですよ。僕は彼が“浮いて”しまうのは、その目線の高さによるものなのかなぁ、と。」

- 面白いですね。

「あなたの写真もそういう、立ち位置とは別の視点があるんじゃないかと。例えば、地面に立って街を撮るときにも、高いビルの位置から、もう一つのカメラで、その地面に立つ自分の場所を映し出しているような。だから写真として見ると非常にバランスが良く見えるんじゃないかと僕は思うんです」

- 少し違うかも知れないですけど写真を撮っているときに、出来上がった写真を頭の中に想像することは実は出来るんです。で、その出来上がった写真を調整するために、-僕はズームレンズを使わないですけど-引いたり、近づいたりして足を動かしているような感じはあります。

「実際、シャッターを押してみて、その頭に浮かんだ写真の構図みたいなのは現像の結果と一致しますか?」

- これはもう、慣れみたいなもののせいかもしれないけど、殆ど狂いなく一致してますね。

「普通の人は、そんなことはないんですよ。自分で思ったとおりの現像結果になんかなっていないですよ、大抵。無理やり、そう思い込む人も中にはいるけど(笑)だから、デジカメがあれだけ流行るんじゃないですかね。その場で確かめて、思い通りじゃなければ削除して取り直せるのが利点ですから。コストレスだしね。ところでデジカメは使いますか?」

- 使わないです。

「所有もしていないんですか?」

- 持ってはいます。でも、僕がアップしている写真は全てフィルムで撮っています。

「それは、取り直す必要が、あなたの場合少ないから、なんだろうか?」

- これを言うと、waterkeyさんは嫌がるかもしれないけど(笑)

「聞きたいですね(笑)」

- 粒子の感じがやっぱり全然違うんですよ。デジカメは粒子がとても規則的だし、

「別に嫌じゃないです、そういう話。」

- 生の人って、近くで見れば、やっぱり肌の荒れとか、皺みたいなのが一人一人違うし、あるじゃないですか。

「ありますよね。」

- そういうのがパターンみたいな配列になってしまうと、なんかツルツルした別のものになっちゃうんですよ。

「なるほどね。リアルじゃないと」

- ある意味ではリアルすぎるんですけどね。僕の場合、それがとても気になってダメなんです。だから、フィルムを使っていますね。

「なるほど。」

→ 次回へ続く。
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by waterkey | 2006-08-21 21:50 | 対談集



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