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<< 海辺の街 / ある一枚の絵葉書
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トーキョー・スカイ >>
水曜日。定時で会社を出る。 僕は銀座通りの地下のバーへと、するすると階段を下りていた。 僕はたまにそこで、一杯だけ一人でお酒を飲むことにしている。 琥珀色の液体を、磨きこまれた透明のグラスにダブルにして貰う。 氷なんていれない。 その代わり、少しだけ水道水で、軽く割る。(もちろん二口目から) 僕はその開店後、間もない、まだ酔いどれた人々のいないカウンターでの一杯が好きだ。 人生には、そういう種類の“一杯”が、どんな言葉よりも優しいときがある。 なんだか、ウィスキーの宣伝文句みたいで恥ずかしいですが・・。 僕はそれを傾けながら、とりとめのない物思いにふける。 「○○さんってストレスがなさそうですよね」 昼間のビジネス・マンの僕に、お客さんが言う。 「ははは、その通りです」昼間の、“誰かになったつもり”の僕が答える。 「こいつは営業マンだよ。でも、社内営業しない変な男なんだ」 会社の僕より年上の誰かが、別の誰かにそう告げる。 「そんな暇ないですから」やはりスーツを着た“一つの仮説としての”僕は、笑って、やり過ごす。 僕は身に纏った沢山の重たい仮説の衣服を、一枚一枚脱ぎ捨てる。 そうやって、体を軽くしていく。 そういう、お酒は一杯だから良い。 都会で生きるというのは中々難しいのだ。 Photograph by cellular phone. The title is “yesterday's sky”.
by waterkey
| 2006-08-09 20:42
| tokyo sky
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